BPRを成功させる7つの心構え

果て無き道

とにかく大変なのです。今期、自社事業のBPRを担当する事になり、プロジェクト進行の真っ最中です。
個人的には、過去にも何度か事業のBPRを経験してきましたが、改めてやっぱり大変だなぁと思いしらされる日々です。

BPRとは…「ビジネスプロセス・リエンジニアリング」の略。事業モデル、業務フロー、組織構造などを「抜本的に」再構築しなおす事。

世の中には同じ様な立場でBPRに取り組んでいる人は多いと思います。BPRを長年経験して百戦錬磨の人もいれば、初めてBPRという取り組みを経験する人まで様々でしょう。今回は特に、後者の、BPRにこれから挑戦する人向けに、ちょっと斜上から目線で、自分がBPRで日頃気をつけている『心構え』をまとめてみたいと思います。

BPRにおいて一番の壁になるのは、おおよその場合、「企業や人の文化を壊す事による利害関係者からの抵抗」だと思います。これは、ステークホルダー全員の利害が一致していれば問題ありませんが、そううまくはいきませんよね。。関係者それぞれがポジショントークで表面的な意見しか言わず、本音を言わない。保身を優先して、相手の立場を考えない。大局を見れない。時には厳しい軋轢を生んでしまう。そんなこんなで、胃がキリキリしてくる。成果を上げても、軋轢と自身の不健康だけが残る。

過去の自分を想像してたら、ちょっと吐きそうな気分になってきました。

BPRにおいては衝突は避けられません。それでも前に進まないと行けません。
ただし、衝突は軽くすることは可能ですし、その衝突のパワーを逆に推進力に変えることも可能です。
それには、テクニックではなく『心構え』が重要だと思います。

理由は単純で、働いているのは感情のある人間だから。
BPRにおいては、いちいち人の感情を気にしていては改革は進まない。心を鬼にして改革を断行すべきだという人もいます。個人的にも、半分は賛成です。しかし、トップダウンの改革には、重大な欠点もあります。

トップダウンの改革とボトムアップの改革という2つの視点は、個人的結論ではどちらも重要です。どちらか一方のみを選択する事はしません。どちらも使いこなす事を選択します。
トップダウンの改革とボトムアップの改革は別の位相なので、そんなうまくはいかないだろうと思う人が多いとは思います。それでも、両方の視点を使いこなせなければ、BPRは成功しません。それだけは言いきって良い事実だと思います。

その視点のコントロールってどうするの?という話ですが、そこに、今回まとめる『心構え』が関わってきます。つまり、BPRを行う上での行動規範にして欲しいと考えています。この『心構え』を意識してみると、トップダウン視点とボトムアップ視点をうまく使いこなせる様になるという話です。

前置きが長くなりましたが、先に書いたとおり、BPRにこれから挑戦する人向けに、自分が日頃気をつけているBPRに向かう際の『心構え』をまとめてみようと思います。

これを読んで下さった方のBPRプロジェクト成功する様祈っております。

味方になる

BPRにおいてはじめに行うことは、課題を抽出するためのステークホルダーへのヒアリングです。その際、BPRの人間は大概訝しがられ、警戒されます。そりゃそうですよね、BPRによって自分の仕事が奪われる可能性だってあるわけですから。
そのときに重要なことは「BPRはみんなの味方」と思ってもらう事です。

理由は2つあります。
1点目は、相手から本音を聞き出すため、です。
BPRの序盤では、現場のモニタリングとヒアリングを行い、課題を抽出し、課題設定を行います。そのフェーズで、適切な課題設定をできるかが、その後のプロジェクトの成否を大きく左右します。アインシュタインが、”問題を20日で解決しなければならないとしたら、私は19日かけて問題を定義する”と言うほど、課題設定は重要なフェーズなのです。この時、現場が警戒している、相手の立場を考えないトップダウンの態度で応対したら、相手は本音を言うでしょうか?言いませんよね。本音を言わないということは、課題の抽出自体もままならないばかりか、課題の本質を必ず見落とします。覚えておいて欲しいのは、トップダウン視点で相手の気持ちも考慮せず、トップダウンの視点だけでは、BPRのプロジェクトは成功しません。特に課題設定が十分できていないプロジェクトでは特にです。そして、味方と思ってもらう方法はひとつです。小さなもので良いので、相手が喜ぶ改善施策を実際に実行する事です。

2点目は、実行と定着のため、です。
BPRの計画を立てたとして、その計画を実行するのは現場の人間です。もし、その現場が協力的で無かったとしたら、どうなるでしょうか?おそらく、そのプロジェクトは失敗します。
もし、協力的であったとしても現場に熱がなかったとしたらどうなるでしょうか?やはり、おそらくその施策は長続きせず定着しません。もし、1点目で挙げた様に本音を聞き出すことができていなかったら、おそらく課題の本質を改善することができず、何も変わりません。そもそもの話になりますね。

顧客の視点から判断する

先ほど、適切な課題設定をできるかが、その後のプロジェクトの成否を大きく左右すると書きましたが、その際にもっとも注意する点は、顧客の目線から判断するということです。社内の関係者からヒアリングし、課題の抽出を進めると、様々なタイプの課題が抽出されます。それには大きく分けて2つのタイプに分類できます。「社員にとって不都合な課題」、と、「顧客にとって不都合な課題」の2つです。
抽出される課題のうち、8割ぐらいは前者なのですが、この前者の「社員にとって不都合な課題」とは、簡単にいうと社員の不満なわけです。ラクしたい、メンドクサイ、などの類です。この課題は、解決しても、得するのは社員だけで顧客は影響を受けない、結果、事業にとってプラスにつながらないことがたいでいです。ましてや、視点を間違えると、社員がラクをできるようになって得をするが、サービス低下により顧客が損をしてしまうケースもあります。

重要なのは、顧客の視点を持つこと、顧客の視点から判断する事が重要になります。

課題の本質を見極める

表面的な課題は、手に負えない程たくさん見つける事ができると思います。しかし、課題設定において重要なのは、課題がたくさん抽出される事ではありません。その中から、課題の根幹をなす『課題の本質』を見つけることこそが重要になります。(トヨタ式カイゼンでは、課題の本質の事を、真の原因と書いて「真因」と呼ぶようです。)
最近では、たくさんの課題は必要なく、『課題の本質』一点のみが重要でそれ以外は捨ててしまっても良いぐらいです。

日々のカイゼンにおいては、表面的な課題への取り組みを行えば良いかと思います。
しかし、タスクフォースで動くBPRにおいて期待されることは、ドラスティックな改革です。
表面的な小さな課題を沢山解決するのでは無く、課題の本質一点をドラスティックに解決する事を期待されていると思うように意識してみて下さい。

この『課題の抽出』には、「なぜ?」を繰り返す『なぜ?なぜ?手法』や、「そもそも、◯◯だよね。」に当てはめる『そもそも手法』を使っています。ぜひお試しを。

自分は黒子と心得る(大切なのは社員のムーブメント)

BPRにおいてプランを実行するのは、現場の人間です。
マネジメント層ばかり盛り上がり、現場が冷めているケースでは、大概は失敗しています。

知識や経験、立場が違えば、考え方が異なるのはあたりまえ。と、多くの人が理解はしています。だからといって、下の立場からその考えの差を埋めようとはしません。
BPRを遂行したい側の立場から言えば、そこはもう一歩踏み込んでお互いに理解し合おうよ。と言いたい所ですが、現場は自主的に協力する事はないわけです。だって、BPRに協力したとしても、社員側からしたらハイリスク・ノーリターンなのですから当たり前です。

協力的でないステークホルダーは、内面に潜んだ利己主義が先行し、沈黙しています。それを打開するためには、問題を「自分ごと」にしてもらう必要があり、その仕掛けが必要になります。その上で、社員からBPRのムーブメントを醸成し、BPRを自分たちで実行していると実感してもらう事が重要なのです。

覚えておいて欲しいのは、BPRを進める側は主役にはなれません。主役は全ステークホルダーであり、おおよその場合は、経営層ではなく現場の社員です。
社員が積極的になるプラットフォームをつくれるかどうかがとても重要なポイントになります。

絶対に譲れない一線を越えない

BPRにおいては事前に『絶対に譲れない一線』を設定しておく事も重要です。往々にして、事業を改革するにしろ、何か別の事業にピボットするにしろ、重要になってくるのは、確実に拡大ではなくフォーカスです。また、事業に抜本的なジャンプを求める場合は、着地点が泥水でないことも、事前に確認しておく必要があります。
ジャンプしてみた結果、事業のフォーカスがぼやけ、事業が一気に衰退していく事もあります。改革が良い方向にドライブすれば良いですが、一方で、悪い方向にもドライブする事もあると肝に銘じておく必要があります。ただ、何でもして良いわけではないということです。

複雑性を嫌う

BPRにおいては、BPRのプロジェクト一回きりで解決できる事はほぼ皆無です。そのため、BPRの文化が醸成され、定着し、その後もBPRが続いてく事がとても重要です。

それには、常に環境をシンプルに保ち、考え方もシンプルにする事が大切です。
複雑性は人や組織を膠着させ麻痺させます。

事業が強くなるときは、たいがい、機能が追加されて拡大するときではありません。いらないものを削ぎ落としシンプルな構造になる時です。
「KISSの法則」という言葉をご存知でしょうか?”Keep it simple, stupid” (シンプルにしておけ!この間抜け)という事なのですが、この様な合言葉を用いて、常にシンプルに整理整頓された状況を作ることはその後のBPRに良い影響を与えます。
シンプルな環境でこそ、人は考えます。そしてBPRは成功します。そして事業は加速します。
複雑性を嫌い、シンプルである事を心掛けてみて下さい。

感情的にならない

最後にして一番重要な項目です。これだけでは覚えていて欲しい項目です。
単純すぎて説明不要ですが、BPRは多くのステークホルダーが絡みます。そのため、複雑な調整を迫られます。また、内容次第では軋轢が生まれます。
そんなとき、もしも、感情的に怒りを出してしまうとどうなるか?BPRプロジェクトのすべてが終わります。

ステークホルダーの内、ほとんどの人間がメリットではなく、デメリットを織り込んだ上でBPRに参加しています。
そんな相手に対し一度怒りを見せてしまうと、すべてが水の泡になる事を覚えておいて下さい。

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